日本を代表する総合商社5社、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の2027年3月期第1四半期決算が出そろいました。

今回の決算で特に注目したいのが、5社すべてが前年同期を上回る利益を確保したことです。

さらに、三井物産、伊藤忠商事、丸紅は、第1四半期として過去最高益を更新しました。

利益額では、

  • 三菱商事:2,985億円

  • 三井物産:2,941億円

  • 伊藤忠商事:2,938億円

と、上位3社がわずか47億円差の2,900億円台に並んでいます。

一方で、商社の利益は資源価格や為替の影響を受けやすく、今回の好決算だけで判断するのは注意が必要です。

今回は5社の決算を比較しながら、

  • どの会社が利益を伸ばしたのか

  • 何が業績を押し上げたのか

  • 各社の強みは何なのか

  • 今後の成長戦略はどうなっているのか

  • 投資家が注意したいリスクは何なのか

を分かりやすく解説していきます。


5大商社の1Q決算は好調

まず、5社の第1四半期利益を比較してみましょう。

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1Q利益トップは三菱商事

今回の1Q利益では、三菱商事が2,985億円でトップとなりました。

三菱商事の大きな特徴は、資源から非資源まで幅広い事業を持っていることです。

2027年3月期第1四半期では、

  • 銅などの金属資源

  • 原料炭

  • エネルギー

  • 持分法による投資損益

などが資源分野が利益を押し上げました。

通期利益予想は1兆1,000億円。

前年の業績から大きく回復する計画となっています。

ただし、三菱商事の場合は資源価格や為替の影響を受けやすいため、1Qの好調な利益がそのまま年間を通じて続くのかがポイントになります。


三井物産:高い利益成長が目立つ

続いての利益額が高いのが、三井物産です。

こちらも資源が好調で、1Q利益は2,941億円。

前年同期比では53.4%増となりました。

さらに、

  • 当期利益:2,941億円

  • 基礎営業キャッシュ・フロー:2,809億円

と、利益だけでなくキャッシュを生み出す力も大きく伸びています。

※基礎営業キャッシュ・フローとは、本業からどれだけ現金を生み出しているかを見るための指標です。

そして今回の決算では、2,000億円の自己株式取得も決定。

取得した株式はすべて消却する方針です。

利益成長と株主還元の両方が目立つ決算となりました。


伊藤忠商事:利益の安定性が強み

伊藤忠商事の1Q利益は2,938億円。

前年同期比では3.5%増と、三菱商事や三井物産と比較すると増益率は小さくなっています。

しかし、伊藤忠商事の魅力は、資源価格だけに依存しない収益構造です。

伊藤忠商事は、

  • ファミリーマート

  • 繊維

  • 機械

など、消費者に近い「川下」の事業を幅広く展開しています。

伊藤忠商事自身も「利は川下にあり」という経営方針を掲げ、消費者ニーズを起点とした事業展開を進めています。

そのため、

資源価格が上がれば儲かる

という単純な商社とは違い、景気や資源価格の変動をある程度吸収できる点が強みです。


丸紅:利益成長率が大きな魅力

丸紅の1Q利益は1,864億円。

前年同期比では20.7%増となりました。

通期予想5,800億円に対する進捗率は32.1%。

5社の中でも高い水準です。

今回の決算では、

  • 金属

  • エネルギー・化学品

  • エアロスペース

  • モビリティ

など複数の事業が利益を支えました。

丸紅の魅力は、資源だけではなく、電力、食料、航空、金融、不動産などに事業を分散していることです。

つまり、

「資源価格が上がらなければ儲からない」

という事業構造ではありません。

複数の事業を組み合わせながら、収益力を高めている点が丸紅の強みと言えるでしょう。


住友商事:好決算だが「利益の中身」に注意

住友商事の1Q利益は1,901億円。

前年同期比11.2%増となりました。

一方で、住友商事については、利益の数字だけを見ない方がいいでしょう。

最大のポイントが、マダガスカルのニッケル事業からの撤退です。

住友商事は2026年5月、同事業の全出資持分を譲渡することを決定。

この譲渡に関連して、2027年3月期第1四半期には約700億円の損失を計上する見込みと説明していました。

ただし、税務上の損失に対する税効果を認識することで、連結決算上の最終的な利益への影響は軽微になる見込みです。

※税効果とは、会計上の損失に関連して将来の税負担が減る効果を反映する仕組みです。


5社の強みを比較すると違いが分かる

同じ総合商社でも、利益を稼ぐ方法にはかなり違いがあります。

会社主な特徴

三菱商事 資源・エネルギーに強い

三井物産 資源と非資源のバランスがよい

伊藤忠商事 非資源・生活消費・川下事業に強い

住友商事 デジタル、リース、不動産、エネルギーなどへの事業転換

丸紅 食料・電力・航空・金属など幅広い事業ポートフォリオ

ここが5大商社を比較するときの重要なポイントです。


各社が「次の収益源」に投資

総合商社は、単純に資源を売買する企業ではありません。

現在は、

  • 資源

  • 食料

  • 金融

  • デジタル

  • 不動産

など、さまざまな事業に投資しています。

特に注目したいのが、資源価格に左右されにくい非資源事業を増やしていることです。


投資家が考慮すべきリスク

決算だけを見ると非常に好調な5社ですが、投資家が注意したいポイントもあります。

① 円高リスク

商社は海外事業が多いため、円高になると海外で稼いだ利益を円に換算したときの金額が減少する場合があります。

例えば住友商事は、年間ベースで1ドルに対して1円の円安が約20億円の利益増加要因になる感応度を示しています。

逆に言えば、円高は利益の押し下げ要因になります。

今回の各社の通期計画では、為替を1ドル150円前後とする会社もあります。

そのため、今後大きく円高が進んだ場合には注意が必要です。


② 資源価格の下落

三菱商事や三井物産などは資源事業の利益が大きいため、

  • 原油

  • LNG

  • 鉄鉱石

  • 石炭

などの価格下落は利益の減少につながる可能性があります。

一方で、伊藤忠商事のように非資源分野の比率が高い会社は、資源価格の影響を相対的に受けにくい点が特徴です。

つまり、

資源価格が上昇する局面では三菱商事・三井物産などが強く、資源価格が下落する局面では非資源比率の高い会社が相対的に有利

という見方もできます。


③ 地政学リスク

中東情勢などの地政学リスクも無視できません。

三菱商事は2027年3月期の業績計画に中東情勢などを踏まえた300億円のバッファーを織り込んでいます。

住友商事も中東情勢のさらなる不確実性に備え、300億円のバッファーを設定しています。

※バッファーとは、予想外の損失が発生することを想定して、あらかじめ利益計画を保守的にしておくことです。

また、米国の通商政策や関税政策によって世界経済が減速すれば、商社の取引量や投資先企業の業績に影響する可能性があります。


④ 大型投資の失敗

総合商社は大型の企業買収や事業投資を積極的に行っています。

これは成功すれば大きな利益を生み出します。

一方で、

  • 投資先の業績悪化

  • 資源価格の下落

  • 減損損失

  • 地政学リスク

  • 事業撤退

などによって大きな損失が発生することもあります。

住友商事のニッケル事業からの撤退は、その代表例です。


株主還元は5社とも積極的

総合商社株が個人投資家から人気を集める理由の一つが、株主還元です。

2027年3月期の配当予想を見ると、

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       5大商社の株主還元比較

※伊藤忠商事と住友商事は株式分割後の1株当たり配当です

特に伊藤忠商事は、

1株44円以上+3,000億円以上の自己株式取得

を計画しています。

三井物産も1Q決算を受けて2,000億円の自己株式取得を決定しました。

5社とも、

「成長投資」+「配当」+「自社株買い」

という形で株主への還元を強化しています。

※自社株買いとは、会社自身が市場から自社の株式を買い戻すことです。
発行済み株式数が減ることで、1株当たり利益や株主価値の向上になります。


まとめ:5大商社は好調だが「利益の質」に注目

2027年3月期第1四半期は、5大商社にとって非常に好調なスタートとなりました。

特に、

  • 三菱商事:1Q利益2,985億円

  • 三井物産:2,941億円

  • 伊藤忠商事:2,938億円

  • 住友商事:1,901億円

  • 丸紅:1,864億円

と、5社すべてが前年同期を上回りました。

また、三井物産、伊藤忠商事、丸紅は第1四半期として過去最高益となっています。

一方で、投資家が注意したいのは、

  • 円高

  • 資源価格の下落

  • 地政学リスク

  • 米国の通商政策

  • 大型投資の失敗

です。

 

投資家目線で見ると、

資源・大型投資を重視するなら三菱商事・三井物産

非資源や生活関連の安定性を重視するなら伊藤忠商事

事業ポートフォリオ改革に注目するなら住友商事

幅広い事業への分散と利益成長を重視するなら丸紅

商社の特徴を踏まえて、自分の投資目的に合った会社を選ぶことが重要ですね。